KAHANA(カハナ)によせて
 
アパリクリニック理事 精神科専門医・指導医 梅野 充 ウメノ ミツル
 
台東区日本堤に依存症回復支援施設カハナ(インテグレーションセンター上野)が誕生いたしました。
施設長責任者キャップの髙橋仁氏は自ら薬物依存症回復者スタッフとして日本ダルク・アパリクリニックなどで研鑽を積んでいらっしゃった方です。われわれアパリクリニックとしても長年の強い信頼関係を結んで協働してきました。
 
日本では薬物、アルコール、ギャンブル、ネットゲームなどの依存症の問題はますます広がりをみせており、世界全体で取り組むべき課題になっています。大都市圏では治療できる施設、医療機関も増えてはおりますが、いまだに健康や保健福祉の問題としてはとらえられずに犯罪や倫理的問題、本人の意思の問題などととらえられる風潮も強いと思われます。私自身、本人は言うにおよばず、ご家族や関係者が長期間にわたって大変な苦労苦悩をされている実態をつぶさに見てきました。
ダルクは薬物依存症の回復支援施設として永年の実績がありますが、そこで長期間スタッフとして活動してきた髙橋氏が新たな施設を立ち上げられたことはひとつの希望です。
依存症に対する治療的働きかけとしては、収監や入院など一時的に環境から分離することも時には必要ですが、カハナのように福祉施設として、生活の場をあくまでも社会内で提供することの意義は大変大きいと考えらます。
その際にあくまでもご本人に対して共感と人間的な温かみをもって対応することが治療的に働くものと考えられます。
わが国では薬物依存症に対して厳罰をもって法的に厳格な対応をすることで再発を予防しようとする考え方(厳罰主義)がこれまでの主流だったと考えられますが、それでも再発再犯をくりかえす場合が多いことが問題視されてきました。そこで近年、矯正や更生の場面でも治療的な対応が少しずつ取り入れられてきました。また医療保健福祉においてもご本人にかたく厳しく対応することではなく、あくまでもご本人の目線、立場にたって受け入れられる治療的提案をしていこうとする考え方への転換が急速に進んでおります。この新しい考え方を「ハームリダクション」と呼びますが、実はこうした立場からの治療的とりくみを長年続けてきたのがダルクであり、髙橋氏はこの新しく、有効な治療的な考え方を体現している方ということができるでしょう。
われわれアパリクリニックとしましては、カハナと緊密に協力して医療面からバックアップしていく体制をとっております。
カハナが地域で依存症への回復支援の活動を十全に展開できるものと期待しております。


これまで培ってきた私たちの経験や実績をもとに、数々の素晴らしいお客様にご愛顧いただいております。